「長引く咳(咳喘息)」について
「ただの咳!」「コロナ感染症の後遺症!」と思わず、正しい理解と治療をしましょう。
「長引く咳」で悩んでいませんか?
この時期には、コロナ感染症による咳もあります。
かぜによるものだと思っている方も要注意です。
咳が長く続く場合は、様々な病気が咳の原因とされていますので、その原因、治療方法について学びましょう。咳を主症状とする多くの病気の中から普段元気に過ごしている皆様がかかりやすい「咳喘息」をとりあげて解説します。
「咳の原因」となる病気とは?
「咳」に関するチェックポイント
1. 空咳か? 痰を伴う咳か?
2. 痰を伴う場合、痰の色はどうか?
3. 発熱や膿性痰などの感染症状を伴うか?
4. ゼイゼイ、ヒューヒュー音(喘鳴)を伴うか?
5. 急性発症か? 慢性か?
6. 膠原病や免疫不全などの基礎疾患はないか?
7. 咳の出る季節はいつか?
8. 咳が頻発する時間帯は?
「咳喘息」の特徴について
1. 好発年齢は20~40歳代ですが、高齢者に発症することもあります。
2. 花粉症やアトピー性皮膚炎、小児喘息、じんま疹などの既往症のある人がかかりやすい病気です。
3. 病気の原因は気道のアレルギー性炎症と考えられており、ハウスダスト、ダニ、カビ、花粉などによることが多いのですが、原因がわからないこともあります。
4.「喉がイガイガする」「喉がくすぐったい」「喉に痰がへばりついた様な感じがする」など喉に違和感があり、咳がこみあげてきます。
5. 布団に入った直後や早朝に咳が出やすい。
6. 季節の変わり目、梅雨時、台風シーズン、特にかぜをひいた後に咳が長引くことが多いので 「かぜがいつまでも治らない」「かぜをくりかえす」と考えてかぜ薬や咳止めの薬を服用しても咳が止まりません。
7. 咳が出るきっかけは冷気、暖気吸入(エアコン)、電車に乗った時、会話、電話、タバコの煙、香水、雨天などで、ひどい時には咳が頻発するため会話も困難になります。
8. 気管支喘息と病名は似ていますが、咳喘息の症状は咳だけで、激しく咳込むことはあっても、気管支喘息のようなゼイゼイ、ヒューヒュー音(喘鳴)や呼吸困難はありません。従って、窒息するような危険性は全くありません。
9. 胸部X線写真は正常で、聴診でも雑音は聞こえません。
10. ステロイド吸入薬や気管支拡張薬が有効です。
「咳喘息」の治療方法
ステロイド吸入薬が良く効きますので、第一選択薬として診断後早期からアドエア、シムビコート、オルベスコ、パルミコートなどを吸入します。ステロイドというと副作用を心配される方が多いのですが、ステロイドを吸入で用いる場合は血液中に殆ど吸収されませんので、内服で長期使用する場合と異なりステロイド薬による副作用はありません。安心して使うことが出来ます。
その他、必要に応じて長時間作用型β刺激薬(セレベント、ホクナリンテープ)やテオフィリン薬(テオドール、テオロング)、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(クラリチン、アレジオン)ロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレア、オノン)などを使用します。気道のアレルギー性炎症は、徐々に改善しますので一般的に咳が完全に止まるまでに2週~1か月間を要します。
「咳喘息」を長引かせない3つのポイント
①吸入薬を指示通り使用しましょう。
内服薬はあくまで、補助的なものです。
治療の主役は吸入薬です。吸入薬を使用せず、内服薬ばかりを飲んでいても改善しません。治療を効果的に進めるためには、吸入薬を指示通り使用しましょう。
②咳喘息かな?と思う場合には、早く治療を開始しましょう。
咳喘息は、かぜや急激な温度低下、低気圧などで誘発されることもありますし、何も誘因はないのに突然始まることもあります。
咳喘息の治療を始める前に、当院では採血やレントゲンで、肺炎、気管支炎、肺結核、間質性肺炎など他の病気ではないことを確認した上で始めます。
そして、治療は早く開始すれば、治療期間も短縮できます。
③根気よく治療を継続しましょう。
咳喘息の治療には、症状や個人差もありますが、だいたい1か月以上かかります。
そして、吸入薬や内服薬を開始してすぐに改善するというよりは、週単位でゆっくりと改善していきます。目安として、順調に治療が進んでいる場合は、1週間で、咳の頻度が半分くらいになります。すぐに咳がおさまらないからと言って吸入薬や内服薬をやめてしまうと、また最初から治療しなければいけないので、根気よく治療を継続しましょう。